日本経済:正念場を迎える賃上げ局面~中小企業の稼ぐ力は高まったのか~
企業収益の現状と課題
2024年10-12月期の法人企業統計季報によると、企業収益は全体として堅調な推移を示している。全産業・非製造業の売上高は過去最高を記録し、営業利益も全産業・製造業・非製造業ともに過去最高となった。為替円安や昨夏の特殊要因の剥落が寄与したことが、増益に寄与したとみられる。一方で、設備投資は全産業で前期比+0.6%と伸び率が鈍化しており、米国の政策動向への不透明感から、企業の投資姿勢には慎重さがみられる(図表1)。
(図表1)設備投資(含むソフトウェア投資)
中小企業における収益の課題~稼ぐ力は高まったのか~
中小企業の経常利益・前年比をみると、人件費要因による下押し圧力が顕著である。特に、製造業では、全規模と比較して変動費要因のプラス寄与が概して小さく、安定もしていない(図表2)。
今次春闘では、中小企業の賃上げ要求が大企業を上回る水準となっているが、その実現には収益力の強化が不可欠。下請け企業が多い中小企業の価格転嫁の成否が今後の収益動向を左右する重要な局面を迎えている。米国等を巡る世界経済の不確実性も加わり、中小企業の経営環境は予断を許さない状況が続くとみる(詳細はレポートをご覧ください)。
(図表2)経常利益・前年比(中小企業・製造業)