日本経済:消費マインドを冷やす食料品価格高騰~コメの次は鳥インフレ(鶏卵)にご注意~
コロナ禍からのリオープンによる消費マインドの改善は振り出しに
拙コラムでは、消費マインドが改善しなければ「賃金と物価の好循環」の実現は難しいとの指摘をしてきたが、1月の消費者態度指数は35.2ポイントと23/4月以来の水準まで悪化しており、改善の兆しは今のところみられない。この消費マインドの悪化の背景には、昨夏以降の米価高騰や昨秋から続く生鮮食品等の価格上昇があるだろう。
こうした中、2/12日に行われた衆議院財務金融委員会において、日銀の植田総裁は、生鮮食品を含む食料品など頻繁に購入される品目の価格上昇が国民生活に強い影響を及ぼしているとの認識を示した。さらに、食料品の値上がりが一時的ではない可能性があることにも言及し、人々のマインドや期待インフレ率などへの影響を考慮しながら政策運営をしていくとして、従来のコアCPI(生鮮食品を除く総合)だけでなく、生鮮食品を含めたインフレ率にも配意する認識を示した格好だ。
次なるリスクは鳥インフレ?~鶏卵価格の高騰懸念~
食料品価格高騰が続く中、次なるリスクとして取り上げるべきは、鳥インフルエンザの流行による鶏卵価格の上昇の懸念である。かつて「物価の優等生」と呼ばれた鶏卵も、近年は生産コストの上昇や鳥インフルエンザの影響で供給不足になり、価格が一時的に高騰したことがあった。
今年も世界的に鳥インフルエンザが流行しており、日本でも1/20日に江藤農林水産大臣が「緊急事態」としてメッセージを公表した通り、1/19日時点で発生件数は急増している。鶏卵の卸売価格は前年比で上昇に転じており、今後3カ月以内に小売価格も上昇する可能性があるだろう。特に、通常1月は年間でも最安値圏の時期であるが、今年1月は価格が高騰しており、今後も高止まる恐れがある(図表)。
(図表)鶏卵価格の推移
令和の米騒動やエッグフレーションを食糧安全保障再考のキッカケに
鶏卵の価格高騰は日本だけに留まらず、米国でも鳥インフルエンザの流行により鶏卵価格が急騰し、25/1月時点で前年同月比+50%を超える上昇率を記録している。米農務省は、2025年シーズンの鶏卵価格予測中央値を前年比+20%としており、予測レンジの最高値は前年比45%という高水準に達する。米国では食料およびエネルギーを除く総合指数(米国版コアCPI)が市場予想を上回る伸び率を示す中、鶏卵価格の高騰が家計の期待インフレ率や消費マインドに悪影響を及ぼさないか懸念される。
気候変動や感染症の流行、地政学リスクなど、食糧を巡る安全保障リスクが年々高まっている現状において、日本でも米価高騰や鳥インフルエンザの流行をキッカケに食糧安全保障について改めて考える必要がある(詳細はレポートをご覧ください)。
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