一貫生産を強みに「あったらいいな」を形に―信菱電機(株)<2025・5・27>
 

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最終更新日: 2025年5月27日

一貫生産を強みにスマートファクトリーの事業化に挑戦

 信菱電機(株)は、1974年の創業以来、三菱電機(株)の協力企業として換気扇など家電製品の製造を中心に手掛けてきた。現在は各方面の顧客からの受注を受け、家電製品を中心に生活関連用品などの製造を手掛け、近年は工場の自動化・効率化を進めるスマートファクトリーにも積極的に取り組んでいる。

 同社の強みは一貫生産体制で、製品の企画・設計からプレスなどの部品加工、その部品の組み立て、検査、製品梱包と全て社内で完結している。一貫生産は、生産性や品質を向上させることや納期も短縮できることから、高い競争力を生み出している。

 さらに、この一貫生産を磨き上げようと手掛けているのがスマートファクトリーだ。ITや自動化機器を使うことで、従来以上にモノや情報の流れをシンプルにし、生産性を向上させている。

 同社では現在、スマートファクトリーの事業化に着手している。自社で培ったシステムを製品化し、販売しようとするもので、深刻化する人手不足を背景に、大きな事業へと成長することが期待できる。

「あったらいいな」を形に地域貢献

 同社が地域貢献の一環として力を入れているのが地域の子供達との交流で、2つの取り組みを行っている。

 1つが、スマートファクトリーの現場を定期的に地域の幼稚園児などに公開するもので、地域企業やものづくりに触れる機会を子供達に提供している。

 そして、もう1つが「あったらいいなを形にしよう」というプロジェクトだ。地元の小学校に出向き、小学生から学校生活で困っていることの提案を受け、それを解決する製品を作り上げている。設計から製造までの一貫生産を強みとする同社ならではの取り組みと言えよう。

 この取り組みへの思いについて、川手元裕専務は次のように語ってくれた。

 「私も子供の頃そうでしたが、飯田市にどんな企業があるかよく知りませんでした。特に製造業は現場を見る機会がないため、どんな仕事をしているのか分かりませんでした。ですから、子供達に飯田市にどんな仕事や企業があるかを知ってもらい、将来、大学進学などで県外に出てしまっても、地域に戻ってきてもらえるきっかけになればと始めました。知らなければ選択肢にも入りませんので、まずは知ってもらうことが大切です。製造業の現場を見たり、体験してもらい、モノづくりの楽しさや素晴らしさを少しでも伝えることが出来ればと思います」。
「知らなければ選択肢にもならない・・・」。地域の中小企業が噛みしめるべきメッセージである。

市場ニーズを見極めたアイデア商品

 子供達の「困った」を形にしてきたノウハウは、本業での独自商品の開発につながっている。一貫生産の技術を活かし、多くの商品を生み出す同社は、世の中の「困った」に目を向け、それを提案営業へとつなげている。コンビニのレジカウンターやゴミ箱など、今や欠かせない存在となっているものも同社のアイデアによるものだ。

 「これは」と思うものを、機能面はもちろん、安全面まで綿密に企画・設計し、顧客に提案。その結果、多くのアイデアが受け入れられてきた。

 コロナ禍においては、フェイスシールドやカウンターバイザーを開発。飛沫感染が懸念される中、店舗やオフィスで人の表情を隠さずに感染を防ぐ方法を模索し、迅速な開発を進めた。

 地域貢献のために推進してきた「あったらいいなを形にする」取り組みは、世の中の変化や市場動向を的確に捉え、ターゲットを明確化し、それに適した商品を開発するという事業のノウハウを同社に定着させた。

 同社は、将来に向けて「地域循環型企業」となることを目指している。これまで同社を育んできた地域への感謝の思いから、収益を社員の給与や設備投資だけでなく、地域の産業人材の育成などの地域貢献にも活用し、新たな価値を創造し、好循環を作り出せる企業である。

 同社はこれからも社会のニーズに寄り添い、地域とともに成長し続ける企業として歩みを進めていくことだろう。


(資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2025年5月24日放送)

 

 

 

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