人を大切にする経営で元気をつくる(15)-(株)タジマ<2025・02・12>
高品質な機械加工技術を強みに
(株)タジマは、半導体製造装置や航空機エンジン、FA機器等に向けた精密部品の設計・加工を手掛けるメーカーだ。その高い技術力から、東京エレクトロン(株)や三菱重工業(株)、三菱重工航空エンジン(株)といった大手メーカーが主な取り引き先となっている。
同社は、大型の高精度製品の安定した量産切削加工技術を強みとしており、特に加工時の熱膨張率が高く、寸法精度が出しづらいアルミニウムや難削材のチタンの切削加工を得意としている。そのため、半導体製造装置のコア部品に求められる厳しい要求精度も十分に充たすことができる。
「社員と家族が幸福になる」をビジョンに掲げて
このように技術を極めてきた同社には、それを支えてきた社訓と経営理念がある。
社訓は「峠には頂あれど、技術には技術の嶺を知る人ぞなし」と果てなき技術の高みを日々追求すべきとしたもので、経営理念は「ニーズにお応えする信頼の製品づくり」とし、技術の向かうべきは社会のニーズであることを示している。
現社長の田島佳典氏は、2022年4月に就任した。その際、創業から70余年、同社を導いてくれた社訓や経営理念を指針とし、さらなる高みを目指すよう意を決した。
自社の現状を見つめ直し、改めて社訓の意味を問いただす中で、「利益を上げ、顧客に喜ばれることだけが会社の目的で良いのか」という疑問に突き当たった。「利益を上げている裏では、会社に不満を持ち、苦しんでいる社員もいるのではないか」「そうであれば、確かに技術に嶺はなく、果てなき高みを志すことは必要だが、同時に社員も高みを目指すことで幸せを感じるようでなければ会社の存在意義はない」と。このように熟考する中で、社員とその家族の幸福こそが何にも増して重要であることに気付いたのだ。
そして、23年8月に社訓と経営理念の思いを具現化するため、「日本の産業を上田から支え、社員と家族が幸福になる」をビジョンとして新たに掲げた。
適材適所が高める幸福感
さらに同社が求める社員の幸福について、田島社長は以下のようにも語っている。
「幸福感を高めるために、適材適所の人員配置は大切だ。製造現場、開発、営業などの部門によって、また、マネジメント職、ジェネラル職など職位によって、それぞれ向き不向きがある。それを尊重しなくてはならない」「適材適所の人員配置により、人は仕事に没頭できる。そのこと自体幸福感に欠かせないことだが、その結果、成果が上がれば、さらに高い幸福感を得ることでる」と。
同社が改めて「社員と家族の幸福」をビジョンに掲げた背景には、適材適所の人員配置が必ずしも十分ではなかった次のような過去の2つの苦い経験があった。
スキル・経験より考え方・姿勢を重視した採用へ
同社では、長い間、製造現場での即戦力を中心に採用を行い、製造以外の開発や営業、管理などの部門には、製造を10年程度経験した後に適宜配属させていくという方法を採ってきた。この方法で問題がない時代もあったが、取引先の業種が増え、要求水準も上がる中では、製造同様に、開発、営業などに携わる新規の人材も不可欠になってきた。また、適材適所の観点でみれば、多くの社員が10年余り製造現場に居続けるのは、決して幸せとは言えない状況だった。
そこで、新卒採用にも力を入れ、製造、技術、営業、IoT改善、生産管理など、部門ごとに求める人材像を明確にし、応募対象も、理系・技術系に関係なく、全学部・学科とした。さらに、応募者には、社訓、理念、ビジョンと、日本の成長産業を高い技術で支えているという自社の強みを説明するのと同時に、仕事内容の厳しい場面もあえて伝えるよう努めた。
マネジメント人材強化で「いい会社」をつくる
人材育成の中心としてきたのはOJTだ。特に高い専門性を持つ社員が多い同社では、OJTによる知識習得やスキルアップは効果的な方法だ。ところが、人材育成がそればかりに偏ると、他の部署との連携が不足したり、部門を超えた視点や、目的・目標に向けて組織を導くマネジメント人材の育成がおぼつかなくなってしまう。
マネジメント人材が機能しなければ、会社が目的・目標を達成することは難しくなり、社員と家族を幸福にする「いい会社づくり」はできない。つまり、同社のビジョンが達成できないということになる。
即戦力重視の採用によるミスマッチと併せて、同社の課題だったのがこのマネジメント人材の不足だった。適材適所の観点からしても、不向きな人材をマネジメント職に登用することで、幸福感とはほど遠い働き方を強いていた面があった。
そのため現在では、新卒の採用時に総合職コースとして製造、技術、営業などの人材を募集すると同時に、幹部候補コースを新設して経営に携わる人材を募集することとした。
さらに、より抜本的な対応策として全社員のマネジメント能力強化に向けた新たなOJTを構築している。田島社長は、このマネジメント能力強化を、「いい会社をつくる」ための取り組み・姿勢としている。
同社は、働きやすい職場環境の整備にも力を入れており、長野県の「職場いきいきアドバンスカンパニー」の上位認証である「アドバンスプラス」の認証を受けている。これにより、社員のエンゲージメントを高め、採用にも有利に働いている。
「いい会社」をつくることは、社員と家族の幸福を通じ、地域や業界を発展させることにもつながっていくだろう。
(資料)『社員を大切にする経営で元気をつくる』長野経済研究所「経済月報2025年2月号」より一部抜粋
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