インバウンド増加と受け入れ拡大の取り組み<2025.1.27>

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最終更新日: 2025年1月27日

地域経済の明るい材料

 2025年が始まって間もなく1カ月。米国のトランプ大統領の就任等もあって世界経済の先行きの不確実性が増す中、国内では物価高が続き、私たちの暮らしにも影響が広がっています。
 こうした中、今年の地域経済にとって明るい材料となり得るのは、海外からのインバウンド(訪日外国人)の増加による、観光業などサービス業の一段の需要拡大です。

過去最多を更新するインバウンド

 日本政府観光局(JNTO)によると、2024年に日本を訪れた外国人客数は推計約3,687万人となり、過去最多だった2019年の3,188万人を超えました。また、北陸信越運輸局によると、24年1月~10月の長野県内の外国人延べ宿泊者数は約174万人となり、こちらもコロナ禍前の2019年の通年158万人を上回っています。
 さらに足元でも、長野県内にはスキーやスノーボードを楽しむ多くの外国人旅行者が訪れており、バスやタクシー、宿泊施設、飲食店などの利用者が例年以上に増えている状況です。

県内のインバウンド受け入れ拡大の取り組み

 インバウンドの増加を受け、旅行者を受け入れる県内地域でもさまざまな試みが進んでいます。そこで、ここからは茅野市と松本市の取り組みについて紹介します。
 茅野市の一般社団法人ちの観光まちづくり推進機構では、「いなかホームステイ」や「郷土料理体験」など、地元住民とじかに触れ合い、地域の生活や文化を体験できる観光プログラム「ちの旅」を企画しています。数時間程度のものから1泊2日で参加するものまで20以上のプログラムがあり、料金は1人数千円から1万7千円ほどとなっています。最近はインバウンドに特に好評で、23年度の外国人利用者は22年度の約2.7倍に増え、全体に占める外国人の割合も22年度の2割弱から23年度は4割になりました。また、合わせて利用できる、集落の古民家を再生した一棟貸しの宿泊施設「ヤマウラステイ」も人気で、こちらの外国人利用者も23年度は前年度の約4倍に増えました。こうした増加の背景には、海外向けの情報発信やプロモーションに加え、過去の利用者の口コミやインスタグラムなどで投稿された写真が、欧米等に在住の日本の文化や歴史に高い関心を持つ層の目に留まったことがあり、旅行代理店経由などではなく、ちの観光まちづくり推進機構の公式HPに直接申し込むケースが増えているようです。
 松本市安曇地区にある株式会社信州未来づくりカンパニーは、主に上高地・乗鞍高原・白骨温泉などのエリアで、地域観光のマーケティングやマネジメントに携わっています。その中で、乗鞍高原のペンションや民宿などの宿泊者を対象に、地域の食材を使ったより付加価値の高い食事を提供する「乗鞍 星と月のレストラン」事業を行っています。これは6月~10月、乗鞍高原に設置したドーム型施設の中で信州プレミアム牛のすき焼きをメインとしたコースディナーを味わい、食後に屋外で満天の星を満喫するオプショナルツアーです。送迎や食事の調理・提供は地域住民や宿泊施設の従業員らが担い、地域食材をふんだんに使ったメニューや乗鞍の自然を間近に感じられる環境が好評を得ています。1人2万2千円~3万円の料金設定があり、以前は国内利用者が中心でしたが、最近はインバウンドの利用が全体の3~4割を占めています。こちらも口コミなどをきっかけに香港やシンガポール、米国等からの利用が増えています。

持続性のために量と質を高める

 インバウンドなどの観光客増加に対し、担い手の確保や設備の充足、サービスの拡充等を持続的に行うには、さらなる誘客と合わせて、当地ならではの高付加価値で上質なサービスを提供するなど、量と質の両方を高めていくことが重要です。これからも、地域全体が観光による活性化の効果を得られるよう、各地で観光振興に力を入れていくことが求められます。

2025年1月27日放送 SBCラジオ「あさまるコラム」より (※事例詳細は「経済月報2025年1月号」に掲載)

 

 

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