熱とその制御の専門家~日本電熱(株)<2023・12・24>
東京スカイツリーに2,600台のヒーターを設置
日本電熱は、工業用電熱制御機器で国内トップシェアを誇っている企業だ。
同社の高い技術の象徴は、東京スカイツリーの展望台に設置された同社の氷結防止用ヒーターだ。
ヒーターは壁面に氷の付着を防止するために設置されているが、日本一高い塔のため、頻繁に保守点検をする訳にはいかない。そのため、受注にあたっては、50年という長期間の製品寿命が求められた。
同社では、この要求を満たすために、「ねじを一切使わない」「溶接をしない」などの独自工法を開発し、自社施設での耐久検証を積み重ね、品質の安定を確立した。
その結果、要求を満たす製品が完成し、現在、大小6種類、2,600台に上るヒーターが設置されている。
「ものづくり大賞NAGANO2024」で大賞を受賞
同社は、あらゆる場面でニーズに沿ったヒーターを開発・製造している。
特に近年ニーズが高まっている脱CO2に対しては、使用場所でのCO2排出がゼロとなる電気式ボイラーを開発し、多様なシーンでの活用を進めてきた。
時代要請に沿った製品であることや、広い使途に効率的に活用できることなどが評価され「ものづくり大賞NAGANO 2024」で大賞を受賞した。
電気式ボイラーは「エコフィット」という名称で商品化されており、優れた性能を有している。
まず、燃焼系ボイラーで必要となる排煙ダクトや燃料配管などの設置が不要なため、そのためのコストが不要で、設備管理業務も少ない。また、燃焼系ボイラーが1カ所に大型ボイラーを設置し、熱を送る配管を巡らせるのに対し、小型で分散設置ができるため、そのための配管も不要でエネルギーロスが少ない。簡易ボイラーに該当するため、ボイラー技士等の法的資格を必要としない。
このような利点を多く持つ製品であるため、機械部品や金型、半導体製造装置、厨房機器などの高温洗浄や、食品・キノコ工場、医療機器等においての殺菌・減菌など広い分野で導入が進み、活用されている
女性技能者が支える日本電熱の現場
同社の従業員は約200人だが、内4割を女性が占めており、この5年間で2倍となっている。今年度の新入社員も5人全員が女性である。
「エコフィット」を支えているのも、女性技能者なのである。
女性が働きやすいよう設備投資を進めてくるとともに、仕事の仕組みも変えてきた。
「女性が働きやすい職場」ということで、口コミから同社に求職をしてくる女性は多い。年間の休日は123日と多く、育児休業は入社1年以上で取得可となっている。「お互い様」の風土が根付いているため、制度導入という形式に終わらず、利用率も高い。
未経験の女性がいち早く戦力となるために、配属後1年間は若手先輩社員が一人つき、手取り足取りの指導を行う「メンター制度」も徹底している。
当研究所の調査からも「メンター制度」導入企業は、人材育成や人材の定着についての効果の高さが明らかとなっている。
各部門での技術勉強会も定期的に開催されている。人材育成も生産性向上のためならず、人材定着の肝となっている。
性別に関係なく働ける環境
番組では、若手の女性技能者が、巧みに製品の根幹となるニッケルクロムの発熱線を高密度に巻き上げる様子や、男性従業員でも難しい溶接作業を器用にこなす姿が紹介された。
巻き線の作業については、「密着して巻くのが難しく、密着した状態で例えば100ミリとか200ミリという長さの指定があるため、少しでも伸びた状態になってしまうとヒーターの容量が変わってしまう」と、密着した状態で巻くことが重要な要素技術の1つになっている説明があった。
溶接について、「苦手意識があったのですが、少しずつやっていく中で、あっ、これできたっていう自信が積み重なっていく中で、楽しいという思いにつながっています」と語る新人女性の言葉は、同社の社風の良さを物語っている。
人手不足は多くの企業にとって、最大の経営課題である。
そうした中、性別に関係なく、誰でもが働ける職場となっていることは、現代においては最大の強みだと言えよう。
(資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2024年12月22日放送)
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