人を大切にする経営で元気をつくる(14)-ネクストリンクス<2024・12・23>
プライム率・リピート率90%超えの ITベンダー
ネクストリンクス(株)は、松本市に本社と主要オフィスを構え、ニアショアでの仕事も受けていることから東京都にも本社を置く独立系のITベンダー企業である。
設立から10年余りという浅い社歴であるにも関わらず、プライム率・リピート率がともに90%を超えるなど、顧客から非常に高い信頼が寄せられている。
同社の企業理念は「ネクストリンクスはすべてのつながりを大切に新たな価値を創造し、地域・社会に貢献します」と定められ、社員や顧客、地域を大切にする姿勢を明らかにしている。そして、キャッチフレーズではより具体的に「我々は ITを通して、お客様が描く『未来』をカタチにします」と謳っている。
目先の利益や業績の拡大は追わない
こうした同社の経営は、目先の利益を追ったり、規模を拡大することを目指す経営とは一線を画す。短期の業績偏重の経営では、長期にわたる顧客の未来を共につくり上げていくことはできず、地域に貢献することも叶わないからだ。
そして何より、業績偏重の経営は、社員に無理な負担をかけ、働きやすさや働きがいを奪い、離職も増やしかねない。社員の成長や幸せなどは望むべくもない。
顧客の未来をカタチにしようと思うのであれば、その前に社員の成長や幸せをカタチにすべきだろう。理念で社員や顧客、地域を大切にすることを謳っている同社の経営が、業績偏重とは異なった路線をとるのは当然のことと言える。
顧客の成長があって 初めて自社の成長もある
同社が求めるものは、システムを販売した対価ではなく、顧客の成長の結果としての自社の成長である。そのため、設立以来、数多く手掛けてきたのは、顧客の中期経営戦略の策定支援やそれに付随した DXのコンサル業務だ。成長のための戦略策定に参画し、提案をし、それを実現するシステムを提供してきた。
短期的な業績を上げるために売るシステムは、一時的なものなのに対し、将来を見据えた戦略に沿ったシステムは、顧客の成長に寄り添って拡大していく。これらによる成果が、冒頭紹介した90%を超えるプライム率とリピート率を生み出している。
自社の方針を実現するための人づくり・組織づくり
提案を基に「顧客の成長があって初めて自社の成長もある」という方針を実現していくためには、それができる人材を育成し、方針を支えるための社風や社内の仕組みが必要となる。そのために同社では、まさにあの手この手での施策や仕掛けを講じてきた。
ここでは、そのうちの2つを紹介したい。
まず、1つ目がチームを核とした人づくりだ。
チームを核とした人づくり
同社の業務の基本単位は、プロジェクトごとのチームとなっている。年間に約80の取引先に対し、大小さまざまなプロジェクトを手掛けている。各チームはプロジェクトマネージャー(以下、PMという)が統括をしているが、求められる能力は、「顧客の真のニーズを理解できること」「そのニーズを解決できる IT能力があること」の2つだ。
そのため、 PMを務めるためには、既定の資格取得などの キャリアパスのほか、顧客を理解するための徹底した学びやリサーチが必要となる。 PMには「お客様が描く未来」をいかに描けるのかということが問われている。
このチームという基本単位は、同社の「働きやすさ」も下支えしている。
同社は、チーム内のPMによるプロジェクト管理から容易に人繰りをつけることができる。円滑なコミュニケーションから短時間勤務に対してもお互いさまの精神が根付いている。そして、顧客とは目指すべきゴールが共有されているため、容易に理解が得られる関係となっている。
短時間勤務や休暇取得は、時には納期が延びることさえも顧客に理解してもらう必要がある。同社は、顧客を自社の仲間と呼ぶにふさわしい関係性にまで高めているため、 顧客理解を得ることが容易となっているのである。
「会社は社員のもの」全員参加型企業
2つ目の取り組みは、全員参加型の経営だ。 同社の経営を見ていくと、社内に傍観者がいないことが分かる。
その土台となっているものが「従業員持株制度」だ。同社は外部資本を入れず、全て社員の出資で運営されている。現在約6割の社員が持株会に入っており、同社の株主となっている。
また、全ての経営情報は全社員に公開されている。利益が悪化すれば、それを見た社員から改善のための提案が出される。各チームのプロジェクトに関する情報も全て共有されているため、お互いの刺激になり、ノウハウの 共有化にもつながっている。
自ら出資し、良い会社にしようと提案することが常態化している同社では、「会社は社員のもの」という風土が息づいている。こうした 風土がなければ、顧客に提案などできるものではないだろう。
「遠くをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す」とは二宮尊徳の教えだが、同社の経営はまさに「遠くをはかる者」と例えられよう。
(資料)『社員を大切にする経営で元気をつくる』長野経済研究所「経済月報2024年12月号」より一部抜粋
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