長野県の誇るべきもの~技能五輪から~<2024・12・13>
スポーツだけではない長野県が誇る産業技術・技能
独立リーグ信濃グランセローズが9月に優勝を飾った。12月には、松本山雅が手中に治めかけていた4年ぶりのJ2昇格を逃したが、年間を通じてその実力を遺憾なく発揮した。いずれも長野県の誇るべきものだと思う。
さて、長野県で誇るべきものはこうしたスポーツ競技だけではない。
全国何位とか金メダルなどといったテーマは、スポーツに主眼が置かれがちだが、長野県が誇る産業技術力を競う「技能五輪大会」というものがある。
技能五輪国際大会、日本は金メダルで5位
技能五輪というものは意外とは知られていない。正式名称は、技能五輪全国大会だが、多方面の職種における技能者の技能レベルを競う大会だ。対象年齢は23歳以下で、各都道府県での地方予選大会等で優秀な成績を収めた者が出場できる。上位入賞者は、2年に一度開催される国際大会出場への出場への切符を手に入れる。
ちなみに今年も第47回技能五輪国際大会が、フランスのリヨンで9月10日から15日まで開催された。60の国・地域から1,313 人の選手が参加し、59職種の競技が行われた。日本選手は、4職種の競技に55人が参加し、金メダル5個、銀メダル5個、銅メダル4個、敢闘賞 21 個を獲得した。金メダルの国別獲得数では 5位だ。
技能五輪の競技職種はものづくり分野からサービス分野まで多岐にわたっている。ものづくり分野では、「機械系」「金属系」「電子技術系」に大別され、サービス分野では美容、理容、料理・フラワー装飾などの「サービス・ファッション系」とITネットワーク、ウェブデザインなどの「情報通信系」。また、「建設・建築系」では左官や建設大工など。それぞれの求められる難易度は高く、国家検定に準じた技能レベルだ。
要するに、技能五輪大会でメダリストになることは、スポーツにおいてと同様、凄い事なのだ。
第62回技能五輪全国大会、長野県勢は15人が入賞
技能五輪全国大会に話を戻すと、先月愛知県等で22~25日に第62回技能五輪全国大会が開催された。
長野県では選手39人が16の職種に挑戦し、15人が入賞(金、銀、銅、敢闘賞)した。また、県選手団は、優秀な成績を収めたとして中央職業能力開発協会会長賞を受賞した。
入賞の内訳は金賞2人、銀賞3人、銅賞7人、敢闘賞3人となっている。
受賞した技術分野をそれぞれ紹介すると、金賞では、情報通信系のウェブデザインと長野県らしく時計修理分野。
銀賞は、冷凍空調技術と建設系の造園部門。
銅賞は、電子機器組立て、時計修理、冷凍空調技術、移動式ロボットなどの「ものづくり分野」に加え、サービス・ファッション系のフラワー装飾部門。
敢闘賞は、電子機器組立てと、フラワー装飾、そしてレストランサービスなども受賞。
それぞれの受賞分野全体をみると、ものづくりナガノに相応しい受賞分野が多く、さらにフラワー装飾、レストランサービスと観光立県長野らしく「おもてなし」が評価されたようにも思う。
各賞を受賞された皆さん、おめでとうございます
非常に誉れ高いことなので、各章を受賞された皆さんをしっかりとお披露目しておきたい。
まず、金賞2名は、ウェブデザインでセイコーエプソンの清水陸(りく)さん、時計修理で同じくセイコーエプソンの百瀬美幸さん。
銀賞3名は、造園でRavenの原田穂(すい)さん、冷凍空調技術でオリオン機械の町田義広さんと同じくオリオン機械の荒木春太さん。
銅賞7名は、電子機器組立てでセイコーエプソンの村瀬修野(しゅうや)さん、フラワー装飾でエス・ケイ花企画の生島初音さん、冷凍空調技術でオリオン機械の八橋真拓(まひろ)さん、時計修理でシチズン時計マニュファクチャリング飯田殿岡工場の伊東愛渚(まな)さん、同じくシチズン時計マニュファクチャリングミヨタ佐久工場の山口弥寿人(やすと)さん、移動式ロボットでセイコーエプソン田中修也さん、同じくセイコーエプソンの中島駿さん。
敢闘賞3名は、電子機器組立てでセイコーエプソン寺島廣人さん、フラワー装飾で(有)桜屋の中山一斗(かずと)さん、レストランサービスでアルピコホテルズ(株)ホテルブエナビスタの菊池蒼衣(あおい)さん。
大変なご努力の末の栄誉、誠におめでとうございました。
確かな技術・技能に期待
長野県は過去の大会においても数多くの入賞者を輩出して、その伝統が引き継がれてきたことが今回の受賞にもつながっている。長野県産業はこうした技能者に支えられている面も大きい。
それ故に彼らの社会的地位や名誉がしっかりと確立することを望みたい。綿々と続く学歴ピラミッドに偏重した価値観を、これら技能者なども併せ評価される八ヶ岳型のものに変えていくことが、強い地域、国づくりとなるのではないか。
先行き不透明な時代、この確かな技術を持つ技能者の活躍がますます期待される。
(初出)SBCラジオ あさまるコラム 2024.12・13放送
関連リンク
産業調査
電話番号:026-224-0501
FAX番号:026-224-6233