価格転嫁の進展に注目<2024.9.20>

印刷

最終更新日: 2024年9月20日

 

運輸業と建設業の残業規制によりコスト上昇

 今年に入り運輸業と建設業における残業上限規制(2024年問題)や急速に進んだ円安などにより、企業を取り巻く経営環境は厳しい状況が続いています。当研究所では7月に「最近の経済環境の変化に関する調査」を実施し、2024年問題の影響、為替動向、コスト上昇分の販売価格への転嫁状況について調査しました。
 まず、今年4月から適用された運輸業と建設業における残業上限規制による自社経営への影響については、運輸業では約7割、建設業では約4割の企業が「マイナスの影響がある」と回答しています。具体的な影響では、運送コストの上昇や建設コストの上昇などといったコスト上昇の影響が最も多くなっています。  

円高を望む企業が9割

 続いて為替動向では、調査時点のドル円レート(1ドル約155円)に対し「円高が望ましい」企業割合が約9割となりました。これは、現状の円安水準が原材料費などの仕入価格やエネルギーコストを押し上げ、収益環境が悪化しているためです。
 そこで自社の望ましい為替水準を尋ねると、「111円から140円」を望む企業割合が約8割となりました。足元、調査時点より10円程度円高に推移していますが、県内企業にとってはまだ望ましい水準とはかい離があり、厳しい水準が続いています。

コスト上昇分の価格転嫁が進まず、企業の経営を圧迫

 円安で原材料価格が上昇する中、コスト上昇分の販売価格への転嫁状況について尋ねました。「全て転嫁済」の企業割合が4.5%の一方、「全く価格転嫁できていない」が7.3%、「5割以下にとどまる」が25.3%となり、価格転嫁が半分以下の割合は3割強となりました。
 販売価格への全ての価格転嫁ができていない理由を尋ねると、「価格交渉をしたが、コスト上昇分全てを受け入れてもらえない」が43.1%と最も多く、次いで「価格交渉をしたが、妥結まで時間がかかる」が33.2%などとなりました。また、「労務費やエネルギーコストは算定が難しく、価格交渉を行っていない」が31.0%、「発注減少や取引停止が懸念されるため、価格交渉を行っていない」が21.2%と、価格交渉を行っていない企業もみられました。
 以上のように、9割を超える県内企業がコスト上昇分全てを転嫁できていない中、今後も2024年問題や円安により各種コストの高止まりが予想され、価格転嫁の進展動向が注目されます。

 

(初出:2024年9月19日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233