新紙幣発行の中、受け継ぎたい先人の思い< 2024・7・22 >
20年ぶりに新たな紙幣が発行
今年7月3日から一万円札などの新たな紙幣が発行されました。新紙幣の一万円札には「近代日本経済の父」と呼ばれる渋沢栄一、五千円札には日本で最初の女子留学生としてアメリカで学んだ津田梅子、千円札は破傷風の治療法を開発した細菌学者の北里柴三郎の肖像がデザインされています。それぞれの分野で傑出した業績を残し、現代社会でも依然重要である新たな産業の育成や女性活躍、科学の発展といった面から日本の近代化に大きく貢献した方々です。
新紙幣発行の中で進むキャッシュレス化
こうした新紙幣の発行が注目される中、最近ではキャッシュレス化の動きも加速しています。
経済産業省によると、全国の個人消費のうち、キャッシュレスで決済された金額の割合は年々伸びており、2023年時点で39.3%と10年前の15.3%と比べ約2.5倍にまで上昇しています。特に、新型コロナの感染拡大で非接触の取り組みの拡大や、消費喚起策としてキャッシュレス決済を用いたポイント還元事業を実施したことなどもキャッシュレスの利用を後押ししました。同省では、2025年までにキャッシュレス決済の割合を4割程度にするという目標を掲げており、将来的には8割にまで引き上げることを目指しています。
キャッシュレス決済は、支払いを簡単、便利に済ませられるほか、記録が残り、予算管理や確認がしやすい半面、オンライン取引の際にはハッキングや詐欺のリスクがあります。特に高齢者などこうした対応に不慣れな方にとっては利用に不安を持つ方も多いのが現状です。キャッシュレスによる効率性や利益を求めることは言うまでもありませんが、今後国内で高齢層の割合がさらに高まる中で、こうした弱者への対応も忘れてはなりません。
今こそ大切にしたい渋沢栄一の思い
一万円札の顔である渋沢栄一は、明治から大正時代に多くの企業や事業を立ち上げる中で「道徳経済合一」という考え方を大切にしていました。これは、企業の目的である利潤を追求するにしても、その根底には道徳が必要であり、社会の繁栄に責任を持たなければならないという意味が込められています。道徳を守りながら利益を追求するというこの思いは、現在の持続可能な社会を目指すSDGsなどにも通じる大切な視点と言えます。
政治を含め至る所で道徳観の欠如がみられる昨今、今後の社会構造の変化に対応するためのさまざまな仕組み作りなどを進めていく際にも、新紙幣に描かれた先人たちの思いを受け継いでいくことが重要に思います。
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